ディープラーニング A to Z · ショウジョウバエ特別編 2

学んだ記憶は本能の回路を通って取り出される

においAをかぐと電気ショックを思い出し、だから避ける。この短い「思考」は二つの場所を通ります。まず学習中枢(キノコ体)が「Aは危なかった」という記憶を取り出し、その記憶が本能中枢(側角)にある合流ニューロンへ渡ってはじめて行動になります。この合流ニューロンは、エサのにおいに近づく生まれつきの行動も担当しています。学んだ情報と生まれつきの情報が、一つのニューロンで出会うのです。

はじめて見る名前がたくさんあります。下の登場人物紹介で、まずニックネームを覚えましょう。本文で点線の下線がある名前にカーソルを合わせるかタップすると、いつでも意味が表示されます。

Dolan, Belliart-Guérin ら (2018). Communication from Learned to Innate Olfactory Processing Centers Is Required for Memory Retrieval in Drosophila. Neuron 100(3):651–668.

2018Neuron 論文発表 [R1]
2つ合流ニューロンの役割:記憶の想起 + エサのにおいへの誘引 [R1]
7段階解剖から行動まで、合流ニューロンを突き止めた手順
6 + 5登場人物:ニューロン6つ · 実験ツール5つ
1.0 · 0.6モデル実験室の合流式:本能 × 1.0 + 記憶 × 0.6(説明用)
2つColab ですぐ動かせるコード
名前

登場人物紹介 — 難しい名前の代わりにニックネームで呼ぼう

論文に出てくる名前は、研究者がニューロンを区別するためにつけた「個人番号」のようなものです。このページでは下のニックネームで話を進め、論文での名前はかっこ書きや小さな文字で併記します。

信号の流れに沿って登場するニューロン6つ

研究チームが使った実験ツール5つ

論文での名前の読み方

PD2a1

PD2a1 = 細胞の幹が脳内を通る経路の名前(PD2)+ その経路内の形のグループ(a)+ 細胞タイプ番号(1)。PD2b1 は同じ経路の b グループです。二つ合わせて「PD2a1/b1」と書き、このページでは合流ニューロンと呼びます。

MBONα2sc

MBON-α2sc = キノコ体出力ニューロン(Mushroom Body Output Neuron)の略 + キノコ体α葉の2番目の区画から信号を受け取るという意味 + 同じ区画の他の出力ニューロンと区別する記号。このページでは記憶出力ニューロンと呼びます。

結局、この論文の話は一文にまとまります。記憶出力ニューロンが送る「あのにおいは危なかった」という信号が合流ニューロンを通ってはじめて、ハエはそのにおいを避ける。

3D

脳の中で記憶が通る道

緑の信号がにおい入力から出発し、キノコ体を通って記憶出力ニューロンから出たあと、側角の合流ニューロンへ渡ります。側角には触角葉からのエサのにおい信号も直接入ってきます。ドラッグして回転できます。

領域

領域ボタンを押すと、その部分だけが明るく表示され、説明が出ます。

1

問い — 本能と学習は本当に別々に処理されるのか

教科書の図は二つの道をきれいに分けています。側角は生まれつきの行動、キノコ体は学んだ行動。でも、側角が本当に本能だけを担当しているのかは、直接試されたことがありませんでした。

従来モデルとこの論文のモデルの比較

ボタンを押して二つの図を切り替えてみましょう。違うのはたった一か所、キノコ体出力ニューロン(記憶出力ニューロン)から側角へ向かう接続です。

実験はこう進む — 訓練して、待って、テストする

ショウジョウバエの記憶実験の基本的な流れです。左はハエたちが経験すること、右はその間にキノコ体の中の接続(重み)がどう変わるかをニューラルネットワークの図で示しています。学習は訓練段階で起こり、テスト段階では変わった接続が行動として現れます。

訓練 ① においA + 電気ショック→ 訓練 ② においBだけ→ 待機 · 記憶の保持→ テスト · T字迷路

出発点になった一つの事実

記憶出力ニューロンは、電気ショックと組み合わせて学んだにおいを避ける記憶(嫌悪記憶)を取り出すときに欠かせないキノコ体出力ニューロンです。そしてこのニューロンの軸索は側角の中へ伸びています。研究チームの問いは二つでした。記憶の情報は本当に側角へ伝わるのか? その伝達は記憶を取り出すのに必要なのか?

2

どうやって見つけたか — 解剖から行動までの7段階

「誰が記憶出力ニューロンの信号を受け取るのか」を探し、確かめ、止めてみて、のぞき込んだ順番です。段階を押して、それぞれの方法とディープラーニングで似た作業を確認しましょう。

3

実験 ① — 合流ニューロンを止めると記憶を取り出せない

温度によって働く遮断タンパク質(Shits)を特定のニューロンだけに入れ、テストの間だけ温度を上げてそのニューロンの出力を止めます。ディープラーニングのアブレーション実験(ablation)と同じ論理です。

ニューロンを選んで止めてみる

棒の高さは結果の方向を示すための模式図です。二つの対照群は遺伝子を片方だけ持つハエで、温度そのものや遺伝子の挿入だけで記憶が落ちないかを確かめる役割をします。

止めるニューロン
記憶の種類
テスト時の温度

棒も迷路も結果の方向を示す模式図です。記憶がよいほど、ショックと組み合わせたにおいAを避けてB側へ多く進みます。

本能の処理が壊れたせいではない

合流ニューロンを止めても、訓練に使った二つのにおいを(同じ濃度で)もともと避ける程度は変わりませんでした。においをかげなくなったり本能的な反応が壊れたりして記憶スコアが下がったわけではない、ということです。

模式図。対照群と遮断群の生まれつきの回避が同程度だったという結果の方向だけを表しています。

4

実験 ② — 訓練が合流ニューロンの反応を変える

カルシウムイメージングは、ニューロンが活動するときに細胞内のカルシウムが増えるのを蛍光の明るさで見る方法です。訓練後、合流ニューロンのにおいへの反応は、記憶出力ニューロンと同じ方向に弱まっていました。

訓練前と訓練後、同じにおいへの反応

ニューロンと条件を切り替えてみましょう。グラフは方向だけを示した模式図で、実際の大きさやプロトコルは論文の図を参照してください。

ディープラーニングで見ると — ある層の重みが変わると、その後の活性値も変わる

ショウジョウバエ

学習はキノコ体の中の接続(ケニオン細胞 → MBON)で起こります。その結果、記憶出力ニューロンの出力が変わり、その信号を受け取る側角の合流ニューロンの反応も変わります。合流ニューロン自身の接続が変わったかどうかは、この実験だけではわかりません。

ニューラルネットワーク

中間層 W2 だけをファインチューニングしても、同じ入力に対するその後の層 h3、h4 の活性値はすべて変わります。活性値の変化を見て「ここで学習が起きた」と断定できないのと同じ理由です。

h2 = f(W2′·h1) → h3 = f(W3·h2) も変わる
5

実験 ③ — 一つのニューロン、二つの役割

脳全体の電子顕微鏡データで合流ニューロンの入力をたどると、エサのにおいを伝える触角葉の投射ニューロンからの入力が直接入っていました。実際に合流ニューロンを止めると、一部のにおいへの生まれつきの誘引も弱まりました。

合流ニューロンに集まる三つの信号

円を押して、それぞれの入力が何を伝えるか確かめましょう。

エサのにおいに近づく生まれつきの行動

模式図。対象のにおいの一部で、合流ニューロンを止めると誘引が減ったという結果の方向だけを表しています。すべてのエサのにおいでそうなるわけではありません。

6

モデル実験室 — なぜ一つのニューロンを止めると二つの行動が一緒に消えるのか

論文が提案した回路をもとに作った、説明用のおもちゃモデルです。合流ニューロンを「生まれつきの入力と学習された入力を足し合わせるユニット」一つとして置き、訓練・遮断・テストを切り替えながらT字迷路の結果を見ます。数値は実際のデータとは無関係です。

訓練
合流ニューロン
テスト
7

ディープラーニングで読み直す

この論文の発見と方法は、ニューラルネットワークを設計・分析するやり方と多くの点で重なります。どれもたとえであり、脳がこのアルゴリズムを使っているという意味ではありません。

一行の式で書くと

合流ニューロンの出力 = f( W_生得 · エサのにおい信号 + W_学習 · 記憶出力ニューロンの信号 )
W_生得:発生の過程で決まる(凍結された事前学習済みの重み)
記憶出力ニューロンの信号:キノコ体で経験によって変わる(ファインチューニングされる経路)
→ ディープラーニングの y = 固定モデル(x) + 学習された補正(x) 構造、残差接続や LoRA アダプターと同じ形
8

モデル構造の比較 — このページのモデル vs MLP · RNN · GRU · LSTM · CNN

ボタンを押して六つの構造の図を切り替えてみましょう。緑の線は学習される接続、点線は固定された接続、オレンジの矢印は時間をまたいで渡る記憶です。図はすべて原理を示す概略図です。

六つの構造をひと目で比較

学習される接続 / 全接続(入力 16×16、クラス 3)

灰色の棒 = 全接続、色付きの棒 = 学習される接続。ディープラーニングのモデルはすべてが学習され、ショウジョウバエのモデルは固定接続がほとんどです。下の学習ツールと共通セクション A のコード2が同じ数を数えます。

最終行の根拠レベル:実際の回路・測定 モデルが実際の回路を写したもの · 構造が類似 接続の形が似ているという意味で、同じ計算をしている証拠ではない · ゆるいたとえ · 純粋なたとえ 説明を助けるための言葉で、生物学的根拠はない。

このページの視点から見た主な違い

②番ページの7章では、この構造を「固定モデル + 学習された補正」、つまり LoRA アダプターにたとえました。表にして並べると違いがよりはっきりします。RNN・GRU・LSTM は時間の中で記憶を隠れ状態として持ち運びますが、このモデルの記憶は接続の強さに保存され、訓練とテストの間の数時間をまたぎます。GRU・LSTM のゲートが「記憶をどれだけ取り出すか」を決めるように、合流ニューロンは記憶と本能を混ぜる場所です(たとえ)。

9

ショウジョウバエ学習ツール — 自分の絵で教えて、すぐ使ってみる

Teachable Machine のように、① クラスごとに例を集め ② 学習させ ③ 新しい入力で確かめます。計算はすべてこのブラウザの中で行われ、絵やWebカメラの映像が外に送られることはありません。同じモデルをコードで動かすには、共通セクション A のコード2を使います。

① データを集める
② 学習する
モデル
エポック30回
学習率0.05
③ プレビュー
入力
エクスポート
コード2へ続く →
読み込み · 保存

集めたサンプルはこのブラウザに自動保存され、再読み込みしても残ります。エクスポートしたデータ・モデルの JSON はまた読み込めます。

はじめかた:「サンプルデータを入れる」を押すか、お絵かきボードに描いてからクラスの「絵を追加」を押しましょう。名前はクリックして変更できます。

Teachable Machine と同じ点

クラス作成 → サンプル収集 → 学習 → リアルタイムプレビュー → エクスポートという流れ、Webカメラ入力、すべての計算をブラウザで行うこと。

違う点

Teachable Machine は、大きな画像モデル(MobileNet)で事前に抽出した特徴の上で小さな分類器だけを学習する転移学習を使います。この学習ツールは、16×16 の絵をこのページのモデルがゼロから学習します。そのため単純な形に向いていて、写真のような複雑な入力は苦手です。そのかわり、検証精度と学習される接続の数をそのまま見せてくれます。

10

一枚でつなぐ — においから記憶の想起まで

マスを押すと該当する説明へ移動します。二つの道は合流ニューロンで出会い、一つの行動になります。

におい
触角葉の投射ニューロン
エサのにおい · 訓練のにおい
学んだ道 · キノコ体
生まれつきの道 · 側角
行動
近づく、または避ける

要点3行

1. 側角は本能だけを処理しているのではない。側角の合流ニューロンは、嫌悪記憶を取り出すのに必要だ。
2. 合流ニューロンは、記憶の信号(記憶出力ニューロン)とエサのにおいの信号(投射ニューロン)を一緒に受け取る、二重の役割をもつニューロンだ。
3. 学習された情報と生まれつきの情報は、特定できる特定のニューロンで合わさって行動をつくる。
読むときの注意点。合流ニューロンは実際には PD2a1 と PD2b1 の2種類ですが、同じ遺伝子ツールで一緒に標識されるため、ほとんどの実験でひとまとまりとして扱われました。生まれつきの誘引に必要だったのは、テストしたにおいの一部においてでした。このページの棒やカーブ、6番のモデルは結果の方向を説明するための模式図で、論文の実際の数値ではありません。統計値は論文本文から引用しました。

Colab コード — このページを自分で実行してみる

どちらのコードも Colab に標準でインストールされているライブラリだけを使います。「ノートブック(.ipynb)をダウンロード」したあと、Colab でファイル → ノートブックをアップロードから開くか、コピーして新しいノートブックのセルに貼り付けてください。

コード1 · 記憶 + 本能の合流モデルを NumPy でセクション6 モデル実験室、「実習:構造比較」と連動 · numpy · CPU 1秒未満

側角(本能)は固定し、キノコ体の出力(記憶)だけがドーパミンのルール(オンになったケニオン細胞 × 選んだ行動 × 報酬・罰)で変わる回路を作ります。においAに罰を5回与えたあと、合流ニューロンへの記憶入力を止めると本能だけが残るかを確かめます。自分のデータに変えるには odor_A と innate の値を変えます。

実行結果(2026-10-04 実行、numpy 2.4 · CPU)。乱数シードを固定しているので、いつ実行しても同じ結果になります。
コード2 · PyTorch で一般的なディープラーニング5種 対 ショウジョウバエモデル3種「実習:構造比較・学習ツール」と連動 · torch, numpy, matplotlib · CPU 約1分

MLP・CNN・RNN・GRU・LSTM とショウジョウバエモデル3種を、同じ絵のデータで学習します。8番のセルで、記憶 + 本能モデルの記憶入力を遮断する実験を行います。学習ツールでダウンロードした fly_lab_data.json を1番のセルでアップロードすると、自分の絵で比較できます。

実行結果(2026-10-04 実行、PyTorch 2 · numpy 2.4 · CPU)。シード2つで別々に学習しました。ショウジョウバエモデルは固定接続のシードが決まっているため、2つのシードの結果が同じです。シード・バージョン・ハードウェアによって数値が変わることがあります。

一般的なディープラーニングのコードと何が違うのか

項目コード1(記憶 + 本能の合流)一般的なディープラーニングのコード
固定される部分側角(本能)+ ケニオン細胞の入力ベースモデル(requires_grad_(False))
学習される部分記憶出力ニューロンの接続 W_mbアダプター adapter
学習信号ドーパミン:結果がよかったか悪かったか(数値ひとつ)正解ラベルとの差(クラスごとの勾配)
更新方法局所ルール:オンになったケニオン細胞 × 選んだ行動 × ドーパミン誤差逆伝播:損失から逆向きに勾配を伝える
止める実験retrieve=False → 合流ニューロンへの記憶入力を遮断use_adapter=False → 補正をオフ
止めた結果本能だけが残り、再び近づく(論文3章の結果の方向)ベースモデルの答えに戻る
注意論文の結果の方向を写した模式モデル実際の LoRA は低ランク行列2つの積 A·B
比較用の一般的なディープラーニングのコードを見る(frozen_base_adapter.py、PyTorch)

AI 応用プロンプト — このコードを出発点にする

ChatGPT、Qwen、Claude などの AI アシスタントに貼り付けるプロンプトです。「コピー」を押すと、プロンプトのあとに選んだコードが一緒に付きます。〔 〕の中を自分の状況に書き換えて使ってください。

一緒に貼るコード

AI の答えは出発点にすぎません。提案された論文・数値・ライブラリ関数は、必ず原文と公式ドキュメントで確認しましょう。コンテストや論文で AI の助けを借りた場合は、主催者や学術誌の規定に従って、使用した事実と範囲を明記してください。

用語集

本文の黄色い点線の下線と同じ辞書です。下線にカーソルを合わせるかタップすると、同じ説明が表示されます。

たとえ集 — そして、たとえが外れるところ

たとえは理解の第一歩ですが、誤解の種にもなります。ショウジョウバエ・脳のたとえには強さを示しました。直接 実際に同じことをしているという根拠がある · 部分 一部の性質だけが似ている · なし 対応するものが知られていない

概念日常のたとえショウジョウバエ・脳のたとえたとえが外れるところ
合流ニューロン二つの部署の報告書を一人が受け取って最終決裁する直接 側角の PD2a1/b1 が、記憶出力ニューロンとエサのにおいの投射ニューロンの信号を一緒に受け取る [R1]実際の合流は単純な足し算ではない。モデル実験室の 1.0・0.6 の重みは説明用だ
記憶の想起倉庫にしまった物を取り出して使う部分 訓練後、同じにおいに対するキノコ体の出力が変わり、その信号が側角へ渡る記憶は一か所に物のように入っているわけではない。接続の強さの変化として散らばっている
ドーパミン学習ほめたり叱ったりして習慣を直す直接 ドーパミンニューロンがキノコ体出力の接続の強さを変える実際のドーパミンは「正解ラベル」ではなく報酬・罰の信号だ。学習ツールの基本モードは正解ラベルで単純化した
固定経路 + 補正(LoRA)本社のマニュアルはそのままにして、支店のメモだけを書き足す部分 側角の生まれつきの経路の上に、キノコ体の学習信号が加わるLoRA は行列を低ランクで掛け合わせて付け加える数学的な方法だ。ショウジョウバエの回路がこう計算しているという意味ではない
アブレーション実験部品を一つ外して機械がどうなるか見る直接 温度スイッチで合流ニューロンの出力を止め、記憶スコアを測る [R1]ディープラーニングのアブレーションは数値を0にすれば終わりだが、生物の実験では対照群と温度の影響を一緒に検討する必要がある

著者紹介と参考文献

E-1 著者紹介 · E-2 学術参考文献 · E-3 図の参考資料

E-1 著者紹介

Sangsun Ahn(株式会社M-Robo 代表)

韓国電気安全公社(Korea Electrical Safety Corporation)、毎日経済新聞(Maeil Business Newspaper)を経て、現在は毎日経済の社外ベンチャーである株式会社M-Robo を創業し、代表を務めています。株式会社M-Robo は報道機関の社内ベンチャーとして始まったメディアベンチャーで、国民日報(Kukmin Ilbo)にロボット記者(ストックボット)を提供し、韓国インターネット振興院(KISA)、韓国言論振興財団(Korea Press Foundation)、韓国放送通信電波振興院(KCA)などで多数のプロジェクトを手がけました。現在は自社の AI ニュース新聞 Money-Robo を運営しています。代表在任中にアジアオープンデータハッカソンで優勝し、データ創業分野での功労により行政安全部(Ministry of the Interior and Safety)長官賞を2回受賞しました。人工知能およびブロックチェーン分野で5件の特許の発明者・登録者でもあります。著書に『AI犯罪と自己防衛』(韓国語)があり、韓国技術教育大学校(KOREATECH)オンライン生涯教育院でフィンテック、統計学、人工知能分野の eラーニングコンテンツを開発しました。最終学位は経済学博士(東国大学校、ミクロ数理経済学)です。国民大学校、湖西大学校など複数の大学で、データと人工知能に関する科目を教えています。詳しいプロフィール

講義

  • Sangsun Ahn (2025). 「ビジネスのためのデータサイエンス」講義資料(韓国語). 韓国オープンサイバー大学(Open Cyber University of Korea)人工知能融合学科.
  • Sangsun Ahn (2025). [K-デジタル] 人工知能 自然言語処理(韓国語). STEP(スマート職業訓練プラットフォーム), 韓国技術教育大学校(KOREATECH)オンライン生涯教育院.
  • Sangsun Ahn (2024). [K-デジタル] フィンテックデータ分析の基礎(韓国語). STEP(スマート職業訓練プラットフォーム), 韓国技術教育大学校(KOREATECH)オンライン生涯教育院.

STEP 講義へのリンク:link.step.or.kr/1qyVoJ · link.step.or.kr/M9na9N · link.step.or.kr/brqEyc
サイトのリニューアルでアクセスしにくい場合は、www.step.or.kr からアクセスしてください。

論文と発表

  • Sangsun Ahn (2025). 国民老後保障パネルデータを活用した世帯支出予測モデルの研究:人工知能モデルに基づくアプローチ(韓国語). 『未来社会』, 16(2). 原文
  • Sangsun Ahn (2025). 国民老後保障パネルデータを活用した世帯支出予測モデルの研究:人工知能によるアプローチ(韓国語). 国民老後保障パネル学術大会 発表資料 (2025.05.13), 国民年金公団 国民年金研究院(National Pension Research Institute). 発表資料
  • Sangsun Ahn (2025). SNS テキストに基づく麻薬疑い取引の検出アルゴリズムに関する研究:パターンと文脈の分析を中心に(韓国語). 『未来社会』, 16(1). 原文
  • Sangsun Ahn (2024). 金融分野の異常検知モデルのセキュリティのための統計に基づく敵対的データ対応策:実証分析とシミュレーション結果(韓国語). 『未来社会』, 15(3). 原文
  • Sangsun Ahn (2024). 人工知能を活用した仮想キャラクター特性に基づく SNS 投稿検出ソリューション(韓国語). 2024 Summer Newmedia Party ポスター発表 (2024.06.19), ソウルメディア大学院大学(Seoul Media Institute of Technology).
  • Sangsun Ahn (2024). 産業災害パネルデータを活用した機械学習モデル(韓国語). 第10回 労災保険パネル学術大会 ポスター発表 (2024.05.17), 勤労福祉公団 勤労福祉研究院(Korea Workers' Compensation & Welfare Service).
  • Sangsun Ahn (2024). 仮想資産の時系列データの分析と予測:時系列モデルと人工知能モデルの比較、改善点の提示(韓国語). 『未来社会』, 15(1). 原文

E-2 学術参考文献

  1. [R1] Dolan, M.-J., Belliart-Guérin, G., Bates, A. S., … Jefferis, G. S. X. E. (2018). Communication from learned to innate olfactory processing centers is required for memory retrieval in Drosophila. Neuron, 100(3), 651–668.e8. doi:10.1016/j.neuron.2018.08.037 — この回全体
  2. [R2] Zheng, Z., Lauritzen, J. S., Perlman, E., … Bock, D. D. (2018). A complete electron microscopy volume of the brain of adult Drosophila melanogaster. Cell, 174(3), 730–743.e22. doi:10.1016/j.cell.2018.06.019 — セクション2・5(電子顕微鏡データ)
  3. [R3] Aso, Y., Hattori, D., Yu, Y., … Rubin, G. M. (2014). The neuronal architecture of the mushroom body provides a logic for associative learning. eLife, 3, e04577. doi:10.7554/eLife.04577 — 登場人物(記憶出力ニューロンの名前)

E-3 図の参考資料

  • セクション3〜6の棒・迷路・カルシウムのカーブは [R1] の結果の方向を写した模式図で、実際の測定値ではありません
  • 締めくくりの場面のキャラクターイラスト:ディープラーニング A to Z 研究室のキャラクター

教育者向けTIP

講師、実務 OJT 担当者、チューターのための運営ガイドです。時間は目安なので、実際の授業に合わせて調整してください。

対象特別編 1 を終えた学習者。論文をはじめて読む大学生・大学院生
前提知識特別編 1 の③(キノコ体とケニオン細胞)、「ルール vs 学習」
学習目標① 学んだ記憶が本能中枢を通って行動になるという論文の主張を一文で言える ② アブレーション実験の論理(止める、対照を置く、比較する)を説明できる ③ 固定経路 + 学習される補正という構造をディープラーニング(アダプター)に対応づけられる
所要時間の目安読む 45〜55分 · アニメーション実演 20分 · Colab実習 30分(コード1 10分、コード2 実行2分 + 解釈15分)

3つの運営プラン

講義型 50分

論文読解が中心

導入5分(登場人物のニックネーム)→ セクション1·2 問いと調べ方 15分 → セクション3·5 実験 15分 → セクション6 モデル実験室 10分 → 確認問題 5分。

実務OJT 90分

設計への応用が中心

セクション1·3 20分 → セクション7 ディープラーニングで読み直す(固定モデル + 補正)20分 → 学習ツールで記憶入力の遮断実験 20分 → コード2 実行·解釈 30分。

1対1チュータリング

レベル別の進度

入門者は登場人物とセクション1·3·6だけ。中級者にはセクション2の7つのステップを、それぞれディープラーニングの分析手法(重みを読む、アブレーション、活性値の観察)と対応づけさせます。

セクション別の運営ポイント

セクション立ち止まって問いかける質問操作のコツ
登場人物「PD2a1/b1という名前は何を意味するのだろう?」名前の読み方カードを先に開く
1 問い「本能と学習は本当に別々に処理されているのだろうか?」教科書の図と論文の図を並べて見る
2 調べ方「ニューロンがつながっていることは、どうやって確かめるのだろう?」7つのステップを順に押す
3 オフにすると?「温度を上げただけで記憶が悪くなったらどうする?」温度の低/高と、ほかの候補ニューロンを比べる
5 2つの役割「1つのニューロンをオフにすると、なぜ2つの行動がいっしょに消えるのだろう?」記憶テストと食べ物への誘引を交互に見る
6 モデル実験室「0.6を0に変えると何が起こるだろう?」「合流ニューロン オフ」を押す
実習:学習ツール「記憶入力を遮断すると、なぜ本能の値だけが残るのだろう?」学習のあとで「記憶入力を遮断」を押す

よくある誤解 Top 5

誤解正しい説明見せる場面
記憶はキノコ体の中だけにある記憶が行動になるには、側角の合流ニューロンへ渡らなければならない [R1]セクション3
本能の回路と学習の回路は完全に別々にある1つの合流ニューロンが、記憶の想起と生まれつきの食べ物への誘引の両方を担っているセクション5
ニューロンをオフにして起きた変化は、すべてそのニューロンのせいだ温度の効果と、遺伝子を入れただけの効果を、対照群で別々に確かめる必要があるセクション3の対照実験
モデル実験室の数値は論文の測定値だ結果の向きだけを写した模式図であるセクション6の黄色いスタンプ
ドーパミンは正解を教えてくれる報酬·罰の信号である。正解ラベルによる学習は説明のための単純化学習ツールの「参考」の文

確認問題(解説はクリックで開きます)

Q1. この論文の主張を一文で書くと?

キノコ体から取り出された記憶の信号が、側角の合流ニューロン(PD2a1/b1)に伝わってはじめて、記憶が行動になる。

Q2. 合流ニューロンをオフにする実験で、「温度だけを上げた対照群」はなぜ必要か?

温度そのものが行動を変えうるので、記憶スコアが下がった原因がニューロンの遮断なのか温度なのかを見分ける必要があるから。

Q3. モデル実験室の合流の式が 1.0 × 本能 + 0.6 × 記憶 のとき、本能 = 0.2、記憶 = −1.0 なら合流の値は? 記憶入力を遮断すると?

0.2 + 0.6 × (−1.0) = −0.4(避ける側)。遮断すると 0.2(本能だけが残り、近づく側)。

Q4. 1つのニューロンをオフにすると、記憶の想起と食べ物への誘引がいっしょに消えるのはなぜか?

そのニューロンが2つの経路(キノコ体からの記憶信号と、食べ物のにおいを運ぶ投射ニューロンからの本能信号)をまとめて受け取って出力する共有層だから。

Q5. コード2で記憶の想起を遮断すると、正解率が0.84から0.09に下がった。なぜ0.09なのか?

本能の値がすべて0なので全クラスのスコアが同じになり、モデルはいつも最初のクラスを選ぶ。0.09はテストデータに占める最初のクラスの割合である。

Colab課題

基本

コード1で innate の値を [0.0, 0.5] に変えたとき(本能が避ける側)、訓練前·訓練後·遮断時の結果がどう変わるかを表にまとめ、本能と記憶が同じ向きのときと逆向きのときを比較してください。

チャレンジ

コード2の MemoryInnate で innate に値を入れて(例:クロスのクラスに 2.0)学習したあと、記憶入力を遮断します。遮断前後の混同行列を比べ、本能が判断をどう引き寄せるかを書いてください。

難易度の調整と発展学習

入門者セクション2の7つのステップとセクション4のカルシウムイメージングは、ざっと眺めるだけでかまいません。セクション3·6をしっかり押さえましょう
発展ショウジョウバエの記憶回路に関する別の研究(記憶出力ニューロンの役割分担)を調べ、この論文と比較して発表させます。調べた論文は原文で確認しましょう
さらに学ぶSangsun Ahn『ビジネスのためのデータサイエンス』講義資料(データサイエンス全般、韓国語)· STEP [K-Digital] 人工知能 自然言語処理(韓国語)· STEP [K-Digital] フィンテック データ分析の基礎(韓国語)
講師用資料確認問題の採点基準と課題の解答例は、教育者用の解答ページ(特別編 2)で見られます

おつかれさまでした!

「特別編 2 記憶想起の論文」を最後まで読みました。研究室のメンバーがひとことずつまとめます。

博士
博士学んだ記憶が本能の回路を通って取り出される道筋を、いっしょにたどりましたね。
  • 記憶はキノコ体から側角の合流ニューロンへ渡ってはじめて行動になる
  • 1つの合流ニューロンが、記憶の想起と食べ物への誘引という2つの役割を担う
  • コード2で記憶入力を遮断すると、正解率が0.84から0.09に下がった
助手
助手ニューロンを1つオフにしただけで、2つの行動がいっしょに消えるなんて!
ショウジョウバエ研究員
ショウジョウバエ研究員記憶は取り出して使えてこそ記憶なのさ。ぼくの側角のおかげだよ。