動作AI・5-5・最終ミッション

「踊って」からダンス動画へ — プロンプトが助手のダンスになるまで

CCTVの路地の棒人間から始まったミッションの最後である。「踊って」のひと言が単語袋を通って棒人間のダンスになり、そのダンスがポーズマップになって助手の姿をまとう。実際の動画をフレーム単位で開いてみて、画面に表示された「動作一致率76.5%」が何を語り、何を語らないのかを検討する。

6段階「踊って」から動画までのパイプライン
240フレーム分析した動画(1280×720、毎秒24フレーム、10秒)
76.5%動画に表示された一致率(240フレームずっと同じ値)
−0.92秒助手が棒人間より先に動くずれ(コード2)
77.6%同じダンスを1秒遅れて踊ったときの関節距離スコア(コード1)
100%ずれの分だけ時間を合わせた後のスコア(コード1)
1ミッション

最終指令 — 「『踊って』のひと言で助手を踊らせよ」

5-4までで、棒人間は言葉を聞き取って踊った。しかし、まだ骨組みだけである。最後のミッションは、この骨組みに人の姿をまとわせて動画にすることだ。モデルになるのは助手である。

[SYSTEM] 07:30・5-4完了報告を受理。最終指令:プロンプト → ダンス動画。添付:助手の参照画像、動画1本(10秒)、カットシート2枚。
博士
博士助手の写真1枚が外見を、棒人間のダンスが動作を担当する。この2つを条件にして、動画生成モデルがフレームごとに助手を新しく描くんだ。
助手
助手動画を見ると、私、アイドルの衣装を着ていますね?参照画像では白衣なのに…。それに画面に「動作一致率76.5%」って出ています。これって良いんですか、悪いんですか?
ショウジョウバエ研究員
ショウジョウバエ研究員いい質問!まずはその数字がどうやって計算されたのかを確かめないとね。動画をフレーム単位で分解してみよう。それから、自分たちで一致率を測ってみよう。
研究室ロボット動画240フレームの分析を終えました。数字の欄は最初から最後まで一度も変わりませんでした。
ピンクの髪に紺色の前髪のライン、両側のお団子、白衣と薄紫のパーカー、ジーンズに薄紫のスニーカーを履いた助手の正面全身
助手の参照画像(キャラクターシートの正面)。動画の中の衣装と違う点はセクション3で扱う。
2一行で

「踊って」から動画まで — 6つの段階を一行で

マスを押すと、その段階を説明する。1〜4段階はこのシリーズで実際に作った計算で、5〜6段階は与えられた動画が示している。

段階入るもの出てくるものこのシリーズの回
1〜2 言葉じょうご「踊って」共有マップの点1つ(8マス)5-4 セクション2・3
3 動作生成地図の点棒人間の動作(フレーム × 関節13個)5-3 セクション6、5-4 セクション5
4 ポーズマップ関節座標黒い背景にカラーの棒を描いた絵(フレームごと)5-1 セクション3の逆方向
5 ポーズに基づく生成参照画像 + ポーズマップ助手がその姿勢をとったフレームこの回のセクション3
6 動画フレームの列ダンス動画この回のセクション4
3助手を描く

ポーズマップに助手をまとわせる — ノイズからフレームを取り出す

ポーズに基づく動画生成モデルの多くは拡散モデルである。ランダムなノイズから始めて段階ごとに少しずつ取り除きながら、「外見は参照画像のように、姿勢はポーズマップのように」という2つの条件を参考にする。スライダーを動かしてノイズを取り除いてみよう。

外見エンコーダ参照画像の顔・髪・服の特徴を取り出し、描いている間ずっと参考にさせる(ReferenceNet系)
ポーズガイダーポーズマップを小さな畳み込みニューラルネットワークでたたみ、ノイズの上に加える。「ここに腕」が最初から決まる
時間層前後のフレームを互いに参考にさせ、服の色や髪がちらつかないようにする

この図と実際の生成の違い

この画面は、完成したフレーム(動画の中の助手)にノイズを割合どおりに混ぜて、「段階ごとに残る元の信号の割合」を見せたものである(√ᾱ の計算は実際の拡散モデルのスケジュールに従った)。実際のモデルは画像を小さくたたんだ潜在空間でノイズを扱い、段階ごとに「ここのノイズはこれだけ」を予測して差し引く[R1]。参照画像とポーズで人を動かす構造は、Animate Anyone[R2]系が代表的である。与えられた動画がどのモデルと設定で作られたのかは、動画に表記されていない。

参照画像の助手は白衣を着ているが、動画の中の助手はアイドル衣装である。ポーズに基づく生成は参照画像の外見をそのまま移すのが原則なので、動画はアイドル衣装を着た別の参照画像(例:下の「助手ソロ12カット」と同じ姿)で作ったか、テキストプロンプトで衣装を変えた可能性がある。どちらなのかは動画だけではわからない。
アイドル衣装を着た助手がひとりで踊る12カット:手を振る、胸の前で手を合わせる、一回転する、後ろ姿、膝を上げるなど
助手ソロ12カット。動画の中の助手と同じ衣装である。
4動画

動画を開いてみる — 棒人間5秒、助手5秒

動画は2つのダンスを並べたのではなく、前後につなげている(0〜4.96秒が棒人間、4.96〜10秒が助手)。「並べて見る」を押すと、同じファイルを2つの画面に表示して、同じ瞬間どうしを突き合わせる。右画面のずれを動かして、2つのダンスが合う瞬間を探してみよう。

元のまま(10秒)
カットシート・棒人間(カット位置は5秒を12等分した近似値。押すとその瞬間へ)
シート1のカット1シート1のカット2シート1のカット3シート1のカット4シート1のカット5シート1のカット6シート1のカット7シート1のカット8シート1のカット9シート1のカット10シート1のカット11シート1のカット12
カットシート・助手
シート2のカット1シート2のカット2シート2のカット3シート2のカット4シート2のカット5シート2のカット6シート2のカット7シート2のカット8シート2のカット9シート2のカット10シート2のカット11シート2のカット12
速度
表示

最初は音がオフになっている。「音をオンにする」で音楽を聞ける。「並べて見る」で、ずれを0.9秒付近に動かしてみよう。

4.96秒場面が切り替わるところ(119番フレーム、コード2)
−0.92秒動きの大きさの相関が最大になるずれ:助手が先に動く(コード2、相関0.48)
左右反転棒人間は画面の右を、助手は画面の左を指す(カットシート7〜8番と4〜5番)
音楽ありAACステレオ。映像とは別に音も入っている
5一致率

「動作一致率76.5%」を検討する

まず動画の中の数字が何なのかを確かめ、次に一致率を自分で測ってみる。同じダンスでも、どう測るかによって数字は大きく変わる。

確かめたこと(コード2)結果意味
数字の欄はフレームごとに変わるか最初のフレームとのピクセル差は最大0.07240フレームずっと76.5%のままである。フレームごとに計算し直した値ではない
前の場面と後の場面の一致率ボックス同じ時刻どうしの平均差0.16同じオーバーレイを2つの場面で1回ずつ再生した。下のピンクのバーの揺れも飾りである
計算方法の表記なし何と何をどんなスコアで比べたのか、動画だけではわからない

自分で測ってみる — 同じ振り付け、違うタイミング(説明用の計算)

左は5秒の振り付け(手を振る → 指さす → 腕を広げて膝 → 両腕を上げる)、右は同じ振り付けを遅れてまねするダンスである。関節距離スコアは骨盤をそろえたあと関節ごとの exp(−距離²/2·0.1²) を平均したもの、手足の向きスコアは骨8本の向きのコサイン類似度を平均したものである。

スコアに応じて変わる助手の表情
まねする側の遅れ1.00秒

コード1の結果

状況関節距離スコア手足の向きスコア
同じダンス、同じ時刻100.0%100.0%
0.33秒遅れてまねする90.8%96.4%
1.0秒遅れてまねする77.6%87.8%
左右が反転したダンス82.5%88.6%
1.0秒遅れ、左右も反転78.7%86.5%
1.0秒遅れたダンスを15フレーム前に詰めて合わせる100.0%—
動的時間伸縮法(DTW)で合わせる99.6%—
左右まで反転したダンス:時間だけ合わせる / 左右も戻す79.6% / 100.0%—

76.5%の読み方

  1. 同じダンスでも1秒遅れると77.6%になる。コード1の例である。動画の中の2つのダンスは約0.9秒ずれていて、左右も反転している。76.5%はこうしたずれをそのまま測った数字かもしれないが、計算方法が表記されていないので確かめられない。
  2. スコアの種類によって数字が違う。同じ1秒の遅れが、関節距離では77.6%、手足の向きでは87.8%である。一致率を語るときは、何を比べたのかもあわせて示す必要がある。
  3. 時間を合わせると変わる。ずれを見つけて合わせたり動的時間伸縮法を使ったりすると、同じダンスは100%に近づく。「ダンスをうまくまねできたか」と「同じ瞬間に同じ姿勢だったか」は別の問いである。
6まとめ

棒人間が歩んできた道 — 5つのミッションを1枚に

CCTVの路地の棒人間1体が特徴になり、生成の材料になり、たたまれては広げられ、言葉とペアを組み、最後に助手のダンスになった。カードを押すとその回へ移動する。

シリーズを貫くひと言
  • すべては数字である:CCTVの画面も、関節も、文も、数字に変えてはじめて計算できる。
  • 良い表現が半分である:特徴4個(5-1)、角度(5-2)、潜在16個(5-3)、共有マップ(5-4)のように、何で表すかが性能を分ける。
  • 見分けることと作ることは、同じ数字を逆向きに使う:投棄を捕まえていた棒人間が、ダンスの骨組みになった。
最後まで残る問い
  • 数字を信じる前に:99.7%は合成データでの結果であり、76.5%は計算方法が表記されていなかった。数字の横には常に「何を、どうやって」が必要である。
  • 人の役割:投棄判定の最終確認(5-1)、実在人物の動作と外見の使用同意(5-2・5-5)は人が責任を負う。

Colabコード — このページを自分で実行してみる

どちらのコードも、Colabに標準でインストールされているライブラリだけを使う。「ノートブック(.ipynb)をダウンロード」したあと、Colabでファイル → ノートブックをアップロードから開くか、コピーして新しいノートブックのセルに貼り付ける。

コード1・動作一致率はどう測るかセクション5と連動・numpy・CPU約5秒

5秒の振り付けを作り、遅れてまねしたダンスや左右を反転したダンスと、2種類のスコアで比べる。時間合わせと動的時間伸縮法(DTW)も含まれている。自分のデータに替えるには dance_seq の代わりに、2つの動画から姿勢推定で取り出した関節座標(フレーム, 13, 2)を A と B に入れる。

実行結果(2026-10-05実行、numpy 2.4・CPU)。乱数を使わないので、いつ実行しても同じになる。
コード2・動画を数字で分解する(OpenCV)セクション4・5と連動・numpy、OpenCV・CPU約3秒・動画ファイルが必要

動画の解像度・長さ、場面の切り替わり、一致率の数字欄の変化、2つの場面の時間のずれを測る。セクション4・5の動画分析の数字はここから出たものである。動画ファイルは、このページに入っているものと同じ match_score_video.mp4 を Colab にアップロードして使う。

実行結果(2026-10-05実行、numpy 2.4・OpenCV 4.13・CPU)。同じ動画なら、いつ実行しても同じになる。

AI応用プロンプト — このコードを出発点にする

ChatGPT、Qwen、ClaudeのようなAIアシスタントに貼り付けるプロンプトである。「コピー」を押すと、プロンプトの後ろに選んだコードが一緒に付く。〔 〕の中を自分の状況に書き換えて使えばよい。

一緒に付けるコード

AIの答えは出発点にすぎない。提案された論文・数値・ライブラリ関数は、必ず原文と公式ドキュメントで確認する。実在の人物が映る映像を使うときは、撮影の同意と個人情報の取り扱い規定をまず確認する。

用語集

本文の黄色い点線下線と同じ辞書である。セクション名を押すと、最初に出てきた場所へ移動する。

たとえ集 — そして、たとえが外れるところ

たとえは理解の第一歩だが、誤解の種にもなる。人の知覚と比べたたとえには強さを示した。直接 実際に同じ働きをするという根拠がある · 部分 一部の性質だけが似ている · なし 対応するものが知られていない

概念日常のたとえ人の知覚のたとえたとえが外れるところ
ポーズに基づく生成マネキンにポーズをとらせておき、その上に服を着せて写真を撮る部分的人が動作を見て、その動作をする特定の人物を思い浮かべることマネキンの服はずっと同じだが、生成モデルはフレームごとに服や顔を新しく描くので、少しずつ変わることがある
参照画像俳優のプロフィール写真なしプロフィール写真にない後ろ姿や指は、モデルが想像で作り出す。作り出した部分が本人と違うことがある
ポーズマップ舞踊譜(振り付けの記録)なし振り付けの記録は人が読んで解釈するが、ポーズマップは関節の位置しか持たない。表情・指・リズムは抜け落ちる
動作一致率カラオケの採点なしカラオケの採点のように計算方法が隠されていると、数字だけではうまくできたのかわからない。何と何をどう比べたのかが先である
時間合わせ(DTW)拍がずれた2人のダンス動画を、拍に合わせて編集し直す部分的人は拍が少しずれても「同じダンス」だと見分けるDTWは順序を変えず、伸ばしたり縮めたりするだけである。動作の順序が入れ替わったダンスは合わせられない

著者紹介と参考文献

E-1 著者紹介 · E-2 学術参考文献 · E-3 図と数字の出典

E-1 著者紹介

アン・サンソン(株式会社M-Robo代表)

韓国電気安全公社、毎日経済新聞を経て、現在は毎日経済の社外ベンチャーである株式会社M-Roboを創業し、代表を務めている。株式会社M-Roboは報道機関の社内ベンチャーとして始まったメディアベンチャーで、国民日報にロボット記者(ストックボット)を提供し、韓国インターネット振興院、韓国言論振興財団、韓国放送通信電波振興院などで多数のプロジェクトを手がけた。その後、自社のAIニュース新聞であるMoney-Roboを提供している。代表在任中にアジアオープンデータハッカソンで優勝し、データ創業分野の功労により行政安全部長官賞を2回受賞した。人工知能およびブロックチェーン分野で5件の特許の発明者・登録者である。著書に『AI犯罪と自己防衛』があり、フィンテック、統計学、人工知能の分野について、韓国技術教育大学校オンライン生涯教育院のeラーニングコンテンツを開発した。最終学位は経済学博士(東国大学校、ミクロ数理経済学)である。国民大学校、湖西大学校など複数の大学で、データおよび人工知能に関する科目を教えている。詳しいプロフィール

講義

  • アン・サンソン(2025)。『ビジネスのためのデータサイエンス』講義案。韓国オープンサイバー大学校 人工知能融合学科。
  • アン・サンソン(2025)。[K-デジタル] 人工知能 自然言語処理。STEP(スマート職業訓練プラットフォーム)、韓国技術教育大学校オンライン生涯教育院。
  • アン・サンソン(2024)。[K-デジタル] フィンテック データ分析の基礎。STEP(スマート職業訓練プラットフォーム)、韓国技術教育大学校オンライン生涯教育院。

STEP講義へのリンク:link.step.or.kr/1qyVoJ · link.step.or.kr/M9na9N · link.step.or.kr/brqEyc
サイトのリニューアルによりアクセスしにくい場合は、www.step.or.krからアクセスしてほしい。

論文と発表

  • アン・サンソン(2025)。国民老後保障パネルデータを活用した世帯支出予測モデルの研究:人工知能モデルに基づくアプローチ。『未来社会』、16(2)。原文
  • アン・サンソン(2025)。国民老後保障パネルデータを活用した世帯支出予測モデルの研究:人工知能アプローチ。国民老後保障パネル学術大会 発表資料(2025.05.13)、国民年金公団 国民年金研究院。発表資料
  • アン・サンソン(2025)。SNSテキストに基づく麻薬疑い取引の検出アルゴリズムに関する研究:パターンおよび文脈分析を中心に。『未来社会』、16(1)。原文
  • アン・サンソン(2024)。金融分野の異常検知モデルのセキュリティのための統計に基づく敵対的データへの対応策:実証分析とシミュレーション結果。『未来社会』、15(3)。原文
  • アン・サンソン(2024)。人工知能を活用した仮想キャラクターの特性に基づくSNS投稿検出ソリューション。2024 Summer Newmedia Party ポスター発表(2024.06.19)、ソウルメディア大学院大学校。
  • アン・サンソン(2024)。産業災害パネルデータを活用した機械学習モデル。第10回労災保険パネル学術大会 ポスター発表(2024.05.17)、勤労福祉公団 勤労福祉研究院。
  • アン・サンソン(2024)。暗号資産の時系列データの分析と予測:時系列モデルおよび人工知能モデルの比較と改善点の提示。『未来社会』、15(1)。原文

E-2 学術参考文献

  1. [R1] Ho, J., Jain, A., & Abbeel, P. (2020). Denoising diffusion probabilistic models. Advances in Neural Information Processing Systems 33. arXiv:2006.11239 — セクション3
  2. [R2] Hu, L., Gao, X., Zhang, P., Sun, K., Zhang, B., & Bo, L. (2024). Animate Anyone: Consistent and controllable image-to-video synthesis for character animation. CVPR 2024. arXiv:2311.17117 — セクション2・3
  3. [R3] Cao, Z., Simon, T., Wei, S.-E., & Sheikh, Y. (2017). Realtime multi-person 2D pose estimation using part affinity fields. CVPR 2017. arXiv:1611.08050 — セクション2(ポーズマップのカラー棒の形式)
  4. [R4] Sakoe, H., & Chiba, S. (1978). Dynamic programming algorithm optimization for spoken word recognition. IEEE Transactions on Acoustics, Speech, and Signal Processing, 26(1), 43–49. doi:10.1109/TASSP.1978.1163055 — セクション5(動的時間伸縮法)
  5. [R5] Lin, T.-Y., Maire, M., Belongie, S., Hays, J., Perona, P., Ramanan, D., Dollár, P., & Zitnick, C. L. (2014). Microsoft COCO: Common objects in context. ECCV 2014. arXiv:1405.0312 — セクション5(関節距離に基づくスコアOKSの出典)

E-3 図と数字の出典

  • 助手のキャラクターシート、表情シート、カットシート2枚、助手ソロ12カット、ダンス動画は著者が作成した資料である
  • セクション4・5の動画分析の数字は、コード2で動画を実際に測定した値である。カットシートの時刻は5秒を12等分した近似値である
  • セクション5の一致率の計算は説明用に作った振り付けで行ったもので、動画の中の76.5%を計算し直したものではない
  • セクション3のノイズの図は、完成したフレームにノイズを混ぜて見せたものである。実際の生成過程を録画したものではない

教育者向けTIP

講師、実務OJT担当者、チューター向けの運営ガイドである。時間は目安なので、実際の授業に合わせて調整する。この回はシリーズのまとめの授業としても使える。

対象5-1〜5-4を終えた大学生・社会人。生成動画や「AIスコア」を業務で扱う企画者・実務者
前提知識5-1の姿勢推定、5-4の言葉 → 動作、拡散モデルの基本的な考え方(ノイズを取り除く)
学習目標① プロンプトから動画までの6つの段階を順に説明できる ② 参照画像とポーズマップがそれぞれ何を決めるのかを言える ③ 一致率のような数字を見たときに「何を、どう比べたのか」を問い、時間のずれがスコアをどう変えるのか例を挙げられる
目安時間読む30〜40分・動画デモ20分・Colab実習25分(コード1 12分、コード2 13分)

3つの運営案

講義型50分

シリーズのまとめ中心

導入5分(セクション1)→ セクション2の6段階10分 → セクション4の動画を並べて見る10分 → セクション5の一致率実験12分 → セクション6のシリーズマップ8分 → 確認問題5分。

実務OJT 90分

スコア検証中心

セクション4・5 25分 → チームごとに「自分たちの業務のAIスコア」を1つ選び、何をどう比べたのかを逆にたどる25分 → コード2で動画を実際に測定20分 → セクション3の衣装の違いをもとに、生成物の表示・同意について討論20分。

1対1チュータリング

レベル別の進度

初心者はセクション2・4・6だけ。中級者にはコード1の score_dist を1フレーム分だけ手で計算させ、DTWの表の埋め方を 3 × 3 でたどらせる。

セクションごとの運営ポイント

セクション立ち止まって問いかける質問操作のコツ
2 一行で「このうち、どの段階がこのシリーズで実際に計算したもので、どの段階が与えられた動画か?」マスを1つずつ押して、下の説明の最後の文を読む
3 助手を描く「参照画像は白衣なのに、なぜ動画はアイドル衣装なのか?」段階を0 → 25に動かし、下のソロ12カットと比べる
4 動画「2つのダンスの回転は何秒に起きるか?」「並べて見る」でずれを0 → 0.9秒に動かす
5 一致率「同じダンスなのに、なぜ77.6%なのか?100%にするには?」遅れ1.0秒で「時間合わせ」を押す
6 まとめ「5つの回で最も重要だった数字を1つ選ぶとしたら?」カードを押して、その回に戻ってみる

よくある誤解 Top 5

誤解正しい説明見せる場面
「踊って」と言えば、AIがダンスを理解して動画を作るいくつもの段階が数字を受け渡していく流れである。言葉 → 地図の点 → 関節座標 → ポーズマップ → フレームセクション2
動画に表示された一致率は信頼できる測定値であるこの動画の76.5%は240フレームずっと同じ値で、計算方法が表記されていないセクション5の上の表
一致率が低ければ、ダンスをまねできていないということだ同じダンスでも1秒遅れると77.6%である。タイミングと左右を合わせれば100%になるセクション5「自分で測ってみる」
参照画像の姿がそのまま出てくる原則はそうだが、参照画像にない部分(後ろ姿など)は想像で作られ、この動画のように衣装が違うこともあるセクション3の下のノート
ポーズマップさえあれば誰でも踊らせられるので問題ない実在人物の外見で動画を作るときは、本人の同意と生成物であることの表示が必要であるセクション6「人の役割」

確認問題(解説は押すと開く)

Q1. 毎秒24フレーム、10秒の動画のフレーム数は?場面転換が119番フレームなら何秒か?

24 × 10 = 240フレーム。119 ÷ 24 ≈ 4.96秒。

Q2. 関節距離が0.1のとき、その関節のスコア exp(−d²/2σ²) は?(σ = 0.1)

exp(−0.01 / 0.02) = exp(−0.5) ≈ 0.607。距離がσだけ離れると、その関節は約61点である。

Q3. 同じダンスを1秒遅れてまねした。フレームどうしをそのまま比べたスコアと、15フレーム前に詰めて比べたスコアは?(コード1)

そのままだと77.6%、前に詰めて合わせると100.0%。遅れが「間違い」として数えられていたのである。

Q4. 動画の76.5%がフレームごとに計算された値ではないことは、どうやってわかったか?

数字欄のピクセルが240フレームずっと最初のフレームとほぼ同じで(差は最大0.07)、2つの場面の一致率ボックスが同じ時刻どうしでほぼ同じだった(平均差0.16)。同じオーバーレイを2回再生したのである。

Q5. ポーズに基づく生成で、参照画像とポーズマップがそれぞれ決めるものは?セクション3のノイズの図で、どの段階がどの条件の役割か?

参照画像は外見(顔・髪・服)、ポーズマップは姿勢。ノイズを取り除く前半(大きな輪郭)ではポーズマップが、後半(顔・飾り・模様)では参照画像が大きく働く。

Colab課題

基本

コード1でσを0.05、0.1、0.2に変えて、「1.0秒遅れてまねする」の関節距離スコアを比べる。σがスコアにどんな影響を与えるのか、一致率を発表するときにσも明示すべき理由を2文で書く。

挑戦

MediaPipeでこの動画の2つの場面から関節座標を取り出し(助手の場面は失敗するフレームも記録する)、コード1の score_dist と best_shift で実際の一致率を計算する。時間を合わせる前と後のスコア、左右を戻したスコアを76.5%と比べて報告する。

難易度の調整と発展学習

入門者セクション4の「並べて見る」とセクション5の「時間合わせ」ボタンだけで、この回の要点がつかめる
発展Animate Anyone論文の構造図をセクション3の表(外見エンコーダ・ポーズガイダー・時間層)と対応づけて発表させる
シリーズの復習セクション6の5枚のカードの数字(60.7% → 99.7%、44.2% → 0.0%、99.8%、1.90 → 0.01、76.5%)がそれぞれ何を測ったのか、1行ずつ説明させる

すべてのミッション完了!

『5-5「踊って」からダンス動画へ』まで、5つのミッションをすべて終えました。研究室の仲間たちの最後のひと言です。

両腕を大きく上げたアイドル衣装の助手
博士
博士深夜2時の路地から始まって、ここまで来ましたね。
  • 棒人間で見分けて(5-1)
  • 逆にして作り(5-2)、たたんで広げ(5-3)
  • 言葉とペアにして(5-4)、踊る動画に(5-5)
助手
助手私が踊る動画ができました!…次は、一致率をどうやって測ったのかも必ず一緒に書いてもらうようにお願いしますね。
ショウジョウバエ研究員
ショウジョウバエ研究員ミッション完了!これで本当に寝ていいよ。最初の画面で完了マークを付けるのを忘れないでね!